更新日:2023年11月6日
こんにちは薬剤師の齊藤です。
コロナウイルスが流行した当初は鼻の奥で検体を採取することがメジャーでした。
しかし最近では唾液で採取したりすることも増えているかと思います。
この二つの方法は何が違い、どのように手段を選択していくべきなのか見ていきましょう。
鼻咽頭拭い液と唾液の違い
鼻で検査した方が唾液よりもウイルスが多く含まれているだろうということは、今やほとんどの方が知っていると思います。
しかし、鼻咽頭で採取することが万能なわけではなく、検査精度がよいからこれのみで実施した方がよいのではないか!!と言い切ってしまうには少し誤りがあります。この理由について少しずつ見ていきましょう。
検体に含まれるウイルス量の違い
唾液よりも鼻咽頭の方がウイルスの発現量が多く、PCR検査でも抗原検査でも鼻咽頭から検体をとることが原則となっています。
もともと抗原検査ではPCR検査に比べてある程度のウイルス量が必要なので、検体の中には多く含まれていた方が検査精度は高くなります。
ここまではご認識のとおりです。
インフルエンザの検査キットは主に鼻腔から採取する。
インフルエンザとコロナが一緒に検査できる検査キットも見かけるようになりました。
インフルエンザウイルスの検査キットは唾液ではなく、鼻腔から取ることが多いので、鼻腔での検体採取に慣れておくことも大切です。
鼻咽頭での検体採取のデメリット
1.採取できない場合がある。
鼻づまりのひどい方、鼻血の出やすい方は鼻咽頭で検体を採取することができません。奥に綿棒を差し込むことで痛みが伴い通常の手順通りに採取を実施することができない方も同様です。
2.感染拡大のリスクも高い
綿棒を鼻に入れることにより、採取時にくしゃみを伴うことも多く、感染拡大の懸念があります。検体採取する方にとっては大きく負担になります。
この2つが大きく鼻咽頭検体採取のデメリットとなります。
唾液検体のメリット
鼻咽頭と比べて、唾液のメリットは感染拡大の防止と検体の採取が簡易的という点にあります。
1.鼻に綿棒を挿入する場合と比べ、唾液採取ではほとんどくしゃみを伴いません。
検体採取側の負担も軽減できますし、不特定多数のいる環境の中など、感染拡大を防止する措置の一つとして有用です。
2.痛みや出血を伴うことなく採取でき、鼻咽頭での採取とくらべと広い年齢層の方が自身で採取可能な方法です。
鼻咽頭と唾液のそれぞれの検体採取時のポイント
検体採取時のポイントを書いておきますので、自身で実施するときは参考にしてみてください。
基本的には説明を受けるか、説明書が付属していますので熟読することが前提となります。製品ごとに特長がありますので把握したうえで実施してください。
鼻咽頭での検体採取時のポイント
・万が一くしゃみをしても感染の拡大がないように十分配慮する。
・綿棒に大きな鼻水の塊を付けない。
・鼻血が付着した場合は再度採取しなおす(擦れる程度であればOKなこともあり)
・痛みのない程度に綿棒を挿入する。
唾液採取時のポイント
・検体採取の30分前の飲食は控える。
・歯磨きやうがいなども30分前までに済ませる。
鼻咽頭と鼻腔での検体採取の違い
ここまでは、鼻での検体採取は「鼻咽頭」での採取を想定して話しています。
あまり気にされない方も多いと思いますが、「鼻咽頭」と「鼻腔」とではウイルスの発現量や侵襲性において差があります。
違う点
・ウイルスの発現量は鼻咽頭よりも少なく、唾液よりも多いといわれています。
・鼻咽頭で採取するときよりも痛みは少ないです。
同じ点
・鼻づまりの状態では採取できない点
・くしゃみに伴う感染症のリスク
検体による抗原検査の特徴、お勧めの人物像まとめ
鼻咽頭 | 鼻腔 | 唾液 | |
---|---|---|---|
検査精度 | 高 | 中 | 低 |
痛み | 強 | 弱 | 弱 |
侵襲性 | 高 | 中 |
低 |
感染拡大のリスク | 高 | 高 |
低 |
お勧めの人物像 | 通常の成人の方 |
鼻咽頭で痛みを強く感じる方 |
慢性鼻炎の方、通年の花粉症の方、アレルギーを持っている方。 |
まとめ
この特徴を踏まえ、自身にあった方法を選択することが理想となります。
検体採取の選択が可能な状況なのであれば、原則「鼻」での採取。「鼻咽頭」で痛みがあれば「鼻腔」へ。
自身の鼻の状態、感染拡大のリスクを踏まえて、鼻腔が難しい場合は「唾液」を選択することもよいと考えます。
ぜひ参考にしてみてください。