新型コロナウイルスの流行によってPCR検査という言葉がよく知られるようになりました。
今回は知っているようで意外と知らないPCR検査のお話しと、抗原検査キットとの違いについてお話していこうと思います。
PCR検査とは?
ウイルスは、DNAやRNAなどのゲノムが本体です。
ウイルスの遺伝子を感知し、数えることができれば、ウイルスがいるかを調べることができます。ただし、実際はすごく小さくてそのままでは読み取ることができません。これを実現させたのがPCR検査なのです。
新型コロナウイルスのPCR検査は、コロナウイルスがもつRNAを逆転写し、そのDNAを増幅させていく方法である「RT-PCR法」と、蛍光を発するプローブという印を用いて、その蛍光を測定することによって、DNAの量を測定することができる「リアルタイムPCR法」を組み合わせて実施しています。
なかなか難しい方法のように感じるかもしれませんが、このようにウイルスや細菌に特徴のある遺伝子配列を感知し増幅させて、それを測定できるようにした検査方法がPCR検査なのです。
遺伝子を増幅させて検出するには、温度を変化させたり、検査薬を入れる手順が繁雑であったり、検出装置が必要であったりと、専門のスタッフや検査機関が不可欠となります。
当然ながら、これに伴って時間や費用もにかかってしまいます。
しかし、コロナウイルスがはやり始めた初期の頃より確定診断に用いられてきた、信頼性の高い検査でもあります。
抗原定性検査とは?
一方、抗原検査の原理は、「抗原検査ってなに?薬剤師がわかりやすく説明します 」でもご紹介しましたが、抗原(ウイルスが持つたんぱく質)を検出するものです。
抗原検査キットは、抗原と抗体が正確に結合することができるという原理を利用した検査方法です。
検査方法の性質としてPCR検査と比べ、ある程度ウイルス量がたまらないと検出できません。
しかし、抗原定性検査の場合は、簡易キットがあれば、自宅で誰でも簡単に検査することができ、検査時間も10分~30分程度の短時間で済むという点が、PCR検査と比較してメリットとなります。
抗原検査キットは、診断の補助器具として広く使われています。
医療機関だけにとどまらず、職場や家庭でのセルフチェックに用いることも有効です。
新型コロナウイルスは症状がなくても、ウイルスが増殖すれば排菌するといわれておりますので、私生活において定期的にセルフチェックをすることは非常に大切であると考えます。
ご説明してきましたPCR検査と抗原検査の違いを、表にまとめたのがこちらです。
抗原検査キット | PCR検査 | |
---|---|---|
原理 | イムノクロマト法 | リアルタイムRT-PCR法 |
検査対象 | タンパク質 | 遺伝子 |
検査方法 | 検体を希釈しカセットに流す | 温度調節必要、手順が繁雑 |
検査難易度 | キットがあれば自宅で測定可能 簡易的 | 専門のスタッフや機関が必要 高度 |
検査時間 | 10~30分程度 | 数時間~ |
まとめ
以上、RCR検査と抗原検査キットの違いについて説明してきました。
2つの検査の違いが、少しでも伝わりましたか?
両者は調べる対象や原理が全く違うため、単純に優劣を比較することはできません。
どちらの方か優れている劣っているというわけでなく、お互いの結果を補完するものという認識を持つことも大切です。
どちらの検査にしろ、検査結果は検査原理や方法、個人の特徴(性別、年齢、既往歴、持病など)を踏まえた上で、その結果を吟味する必要があります。
日常でのスクリーニング検査としては検査キット、疑わしい症状や状況がある場合は医療機関に相談・受診などと使い分けするとよいでしょう。